被相続人が所有している預金の残高や有価証券を調べる方法

財産を所有している人が亡くなったら、その財産を相続人で分割します。その時に必要なのが、被相続人(亡くなった人)がいくらの財産を持っていたかということです。多くの場合、預金や有価証券といった金融資産を所有しています。ここでは、預金や有価証券などの金融資産をいくら所有していたか、その調べ方を解説します。

預金の残高は「預金の残高証明書」で確認する

被相続人が所有している財産の中に必ずといっていいほど存在するのが、預金です。もちろん、預金は相続税の対象となる財産のため、その残高を調べる必要があります。

まず、所有している預金(口座)を確定させる必要があります。そのためには、家にある通帳を確認するほか、クレジットカードの明細などの郵便物や公共料金の引き落とし口座を確認するなどの調査が必要です。複数の口座を所有している場合は、被相続人の生前にどのような口座があるかをあらかじめ確認しておいたほうがよいでしょう。

所有している預金(口座)を確定できたら、次は相続開始時の残高の確定です。一般的に預金の残高は、「預金の残高証明書」で確認します。金融機関名や口座番号などがわかれば、銀行で預金の残高証明書を発行してもらうことが可能です。口座番号などが分からない場合は、金融機関に出向き手続きを行う必要があります。金融機関ごとに、必要な書類や手続きが異なります。まずは金融機関に電話で問い合わせしましょう。

被相続人が所有している預金の中に定期預金がある場合は、預金の残高証明書以外に金融機関が発行する「既経過利息計算書」が必要です。既経過利息とは、相続開始日にその口座を解約した場合に付されるであろう利息のことです。定期預金の場合、相続開始日の残高に既経過利息を合算した金額が相続税の対象となるので注意しましょう。

※金融機関に預金の残高証明書の発行を求めると、その口座は凍結され原則、相続が完了するまで、引き出し等ができなくなります。

有価証券の残高は「証券残高通知書」で確認する

有価証券についても、まずは被相続人が所有している有価証券を確定することから始めます。

有価証券には、大きく分けて証券会社を通じて購入しているものと、それ以外のものの2つがあります。証券会社を通じて購入しているものの場合は、金融機関から取引の明細や残高の明細などが送られてきているので、その明細から所有している有価証券を確定します。証券会社を通じず、例えば知人などから購入している有価証券について、配当がある場合は、通帳の起債や送付されている配当の計算明細書などから確認します。配当がなく、証券会社を通じず購入した有価証券は、相続開始後に見つけにくいため、被相続人の生前に、あらかじめどのような有価証券があるかを確認しておいたほうがよいでしょう。

所有している有価証券の確定ができたら、次は相続開始時の残高の確定です。一般的に有価証券の残高は、「証券残高通知書」で確認します。証券残高通知書は、購入した証券会社が発行します。証券会社を通じず購入した有価証券で残高が分からないときは、その有価証券の発行会社に直接問い合わせすることになります。

正確な遺産分割や相続税申告のためには正しい財産調査が必要

相続の流れは、まず被相続人の所有している財産と相続人の確定をします。その後、遺産をどう分割するかを相続人全員で協議し、全員が同意してから遺産を分割します。最後に相続税の申告と納付を行います。

正確な財産調査ができていないと、他に財産があるのではないかと思う相続人が出てくるなど、遺産分割協議でトラブルになり、遺産を分割できないという可能性もでてきます。

また、たとえ遺産分割と相続税の申告が終わったとしても、そのあとで新たな財産が見つかったら、再度、遺産分割協議からやり直しになり、多くの手間や労力がかかります。

財産調査は相続の基本となるため、正確さが必要となります。

現預金の残高調査では、納税資金のことも考えよう

正しい財産調査をすれば、現金や預金の残高を把握することができます。その際に遺産をどう分割するのかを考えるとともに、納税資金をどうするのかを考えることも重要になります。

例えば、相続財産のほとんどを不動産や有価証券など、現預金以外の財産が占める場合は、相続した現預金だけでは納税資金が足りない場合もあります。その場合は、別で納税資金を用意したり、不動産や有価証券の売却などを考えたりする必要がでてきます。相続税の納付期限は相続開始後10か月のため、できるだけ早く納税資金について考えておかなければなりません。

納税資金の対策は税理士に相談し、生前から対策を行っておくことが必要

相続が開始されてから納税資金の対策を立てていては、納税までの期限に間に合わない可能性があります。そのため現預金が少ないと思われる場合は、被相続人の生前から対策を行っておく必要があります。例えば、死亡後に遺族にまとまった資金が入るように生命保険に入っておくなどです。納税資金の対策は、その人の事情によってさまざまです。そのため1人で対策をたてるのは難しいでしょう。「納税対策の必要があるかも……」と思ったときは、できるだけ早く税理士などの専門家に相談しましょう。