相続税申告は誰に相談すべき?税理士・弁護士・司法書士・行政書士の役割
相続税が開始されると、10か月以内に相続税の申告と納付をする必要があります。しかし、相続税の申告をする前には、相続財産の評価をしたり、遺産を分割したりといろいろな手続きが必要です。また、その中でわからないことや問題も出てきます。実は、その手続きや問題によって相談すべき専門家が異なります。ここでは、それぞれどの専門家に相談すればよいか解説します。
税理士は相続税申告・生前対策のプロ
まず、相続税の申告を依頼したいというのであれば、税理士に相談します。相続税にかかわらず、税金の相談や申告の作成は税理士の仕事です。特に相続税では、所得税などの他の税金よりも計算が複雑であるうえ、多くの申告書類を作成する必要があるため、納税者自ら申告書を作成することは難しく、税理士に相続税の申告を頼む場合が多いです。
税理士が相続税の申告で行う主な業務には、次のようなものがあります。
①相続税の計算・申告
税理士が行う相続税の計算・申告は、単に相続税を計算し、申告書を作成するだけではありません。それぞれの人の状況を確認し、税金が有利になる特例はないかなどを考えながら相続税を計算します。相続税では、特例を使うことで納める税金が大きく変わります。実際は納税者自身が特例について詳しい知識を持つことは難しいため、税理士の力が必要になります。
②生前対策
相続税では、生前に計画的に対策を行っていくことがとても重要です。相談時点で相続するなら、相続税がいくらになるかをシミュレーションして対策を立てます。具体的には、相続税の金額を減らすための対策や、相続時の納税資金をどう確保するかの対策、生前贈与など遺産分割をどうスムーズに行うかなどの対策を行います。
親族間トラブルなどの揉め事は弁護士に相談
税金のこと以外で、相続でおこるトラブルの多くは、親族間の問題です。遺産の分割割合で争ったり、相続時に初めて知った相続人がいたりと、さまざまな問題が発生します。このような相続人間の問題を相談する専門家が、弁護士です。弁護士が相続で行う主な業務には、次のようなものがあります。
①依頼人の代理
弁護士は、依頼人に代わって直接交渉を行うことができます。そのため、相談者がトラブルのある相手に会う必要がなく、精神的にも楽になります。
②相続における各種手続き
弁護士は、被相続人の生前に行う遺言書の作成や保管、執行などの手続きや、相続放棄、遺留分減殺請求などの各種手続きを行います。
不動産の名義変更などは司法書士へ
相続財産に不動産がある場合は、その不動産を引き継ぐ相続人が決まれば、名義変更(所有権移転)の登記を行う必要があります。この登記を行う場合は、司法書士に相談します。
また司法書士は、弁護士より範囲が制限されますが、相続における各種手続きもすることができます。司法書士が相続で行う主な業務には、具体的に次のようなものがあります。
①相続登記
相続登記とは、相続における不動産の名義変更の登記のことです。実は、相続登記は義務ではありません。しかし、相続登記をしないと不動産を売却できなかったり、次の相続時に支障をきたしたりするため、原則、司法書士に依頼して行います。
②相続における各種手続き
遺言書の作成や保管、執行などの手続きは、司法書士でも可能です。また相続放棄も書類の作成に限り行うことができます。
遺産分割協議書などの書類作成は行政書士の分野
遺産の分割は相続人の全員で協議をし、全員の同意があって初めて行うことができます。その証明のため、通常は遺産分割協議書を作成し、相続人の全員の記名・押印を行います。こういった書類の作成は、行政書士の仕事です。
また、税理士の資格があれば行政書士にも登録できるため、税理士と行政書士どちらの資格も持っている専門家も多くいます。行政書士が相続で行う主な業務には、次のようなものがあります。
①書類の作成
遺産分割協議書や、遺言書、遺留分減殺請求などの書類の作成を行います。
②相続についてのアドバイス業務
行政書士は、弁護士や司法書士のように一定の相続人側に立って行動することはできません。しかし、中立な立場でなら、書類の作成に伴う相続についてのアドバイスを行うことができます。
相続税に関するお悩みは税理士にご相談ください
ここまで、相続の手続きやトラブルなどでの相談先について見てきました。どの相談事も相続ではよく起こりますが、最終的に相続税の税額計算や申告書の作成は税理士のみが行うことのできる業務です。そのため、相続の申告をする人は、ほとんどの場合税理士に相談します。
問題によってそれぞれの専門家を探し、状況をはじめから相談するのは、多くの時間を要します。相続に強い税理士は、弁護士や司法書士など他の士業と連携している場合も多く、税理士に相談すればすべての手続きを進めてもらえる強みもあります。相続税に関するお悩みがある場合は、ぜひ税理士にご相談ください。