遺産分割を正しく行うためには相続人調査が必要不可欠
相続が始まったら、遺産をどのように分割するかが問題になります。そのときに必要なのが、相続人の確定です。相続人の確定をせずに遺産を分割すれば、後になって他の相続人が判明したときに、遺産分割のやり直しが必要になったり、トラブルが起きたりすることがあります。相続人の確定をするために行うのが、相続人調査です。ここでは、相続人調査の方法について詳しく解説します。
相続が開始されたら、まずは相続人を確定しよう
相続では、遺言書がない場合、遺産をどう分けるかを相続人全員で協議し、全員の承認を得ない限りは遺産を分割することができません。相続開始後10か月以内に相続税の申告や納付をする必要がありますが、遺産分割が終わらないとそうした手続きもできません。そのため、相続が開始されたら、相続財産と相続人の確定を行う必要があります。
後で抜けている相続人が明らかになると相続が無効に
相続人の確定を行う時点で、今まで知られていなかった相続人の存在がわかるということもあります。では、相続人の確定をしないまま遺産を分割して、後で抜けている相続人がわかった場合はどうなるのでしょうか。この場合は遺産の分割が無効とされ、相続のやり直しになります。相続税の申告・納付が終わっている場合も、税額等が変わる可能性が高く、やり直し(修正・更正)になるため、結果としてかなりの手間や時間を要してしまうことになるでしょう。
戸籍調査で相続人を確定させる
相続人を確定させるためには、被相続人(亡くなった人)の戸籍を遡って調べる必要があります。この作業を戸籍調査といいます。
戸籍調査では、被相続人が生まれたときから亡くなるまでの戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)がすべて必要になります。
なお、戸籍には、除籍、改製原戸籍と呼ばれるものも含まれます。
ただし、多くの場合、昔の戸籍謄本をいきなり取得することができないため、現在の戸籍から1つずつ調査し、遡っていくことになります。
では、戸籍調査の手順を確認しましょう。
まずは、現在の戸籍を手に入れる必要があります。現在の戸籍は原則、本籍地のある市区町村で管理されています。そのため、本籍地のある市区町村の役所で戸籍を取得します。本籍地が今住んでいるところより遠方にある場合は、郵送で戸籍の請求を行います。ただし、戸籍の請求ができる人は、次の人に制限されています。
- 戸籍に記載されている人とその配偶者
- 直系親族
- 委任状のある代理人
現在の戸籍謄本を取得したら、婚姻や離婚、養子縁組などの有無や、改製や転籍がないかなどを確認し、ひとつ前の戸籍を請求します
この作業を繰り返し、被相続人の出生時の戸籍謄本まで遡って取得します。
戸籍謄本の取得のためには、戸籍証明書交付申請書や本人確認書類、手数料(郵送で請求する場合は郵便定額小為替)、委任状(代理人が請求の場合)、返信用封筒(郵送で請求の場合)などさまざまな書類が必要です。また、必要書類は自治体ごとで異なるため、必ず事前に問い合わせなければなりません。
戸籍調査に必要な3つの書類
戸籍調査には、戸籍謄本と除籍謄本、改製原戸籍謄本を取得する必要があります。ここではそれぞれの書類の違いについて確認しましょう。
①戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)
戸籍謄本とは、戸籍に記載されている本人や配偶者、子供など家族全員の情報すべてを写した証明書です。いわば現在の戸籍で、戸籍全部事項証明書ともいいます。
②除籍謄本
結婚や死亡などで戸籍から抜けることを除籍といいます。結婚した場合は、新たに戸籍を持つことになります。元々の戸籍から、記載されていた全員が除籍されたものを写した証明書が除籍謄本となります。
③改製原戸籍謄本
実は戸籍は、法律の改正などを理由に、今までに何回か作り変えられています。この戸籍の作り直しを改製といい、改製前の戸籍を改製原戸籍謄本といいます。改製されると、その時の必要な情報しか改製後の戸籍謄本に転記されません。つまり、それまでに記載されていた除籍された人は、改製後の戸籍には記載されないことになります。そのため、戸籍を遡る場合には、改製原戸籍謄本が重要になります。
正確な相続人調査は専門家に依頼しよう
相続を開始して、正しく遺産を分割するためには、相続人の確定が必要です。それは相続人の確定しないままに相続を進めても、後で、別の相続人が出てくれば相続が無効になってしまうためです。しかし、相続人を確定するためには、現在のものから出生時のものまで遡って、戸籍謄本や除籍謄本、改製原戸籍謄本を取得する必要があります。そのためには、戸籍謄本等に記載されている内容を理解する知識が必要であったり、必要書類を集める手間や時間がかかったりするため、1人で行うのは困難です。
相続税の申告は期限もあるため、相続が開始されたら、できるだけ早く税理士などの専門家に依頼しましょう。