相続税申告

相続税対策というと、節税対策を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。しかし、いくら節税対策をして相続税が安くなったとしても、納税資金が手元にないと、納税ができなかったり、遅れたりして、延滞税など余計な支払いが生じてしまう可能性があります。ここでは、節税対策と同じくらい重要な相続税の納税資金の確保について解説します。

納税資金の確保もしっかり考えよう

相続税のシミュレーションをして、おおよその納付金額が分かっている場合には、節税対策に加えて納税資金確保の対策をする必要があります。どちらも重要ですが、納税資金の確保をおろそかにはできません。なぜなら、原則として相続税の納税は現金での一括払いとなっているからです。もし納税資金が手元にないと、せっかく相続した、もしくはもともと自分で所有している有価証券や不動産を売却して、納税資金を確保しなければならなくなります。最悪の場合、不動産の活用など、相続前に計画していた相続後の生活ができなくなる可能性もあります。そうならないためにも、節税対策と並行して、納税資金の確保についても考えていきましょう。

納税資金がなく、納税が遅れるとペナルティが発生する

相続税の申告と納付は、相続が開始されてから10か月以内に行う必要があります。納税資金がないために不動産や有価証券を売却しようと思っても、買い手がすぐ見つかるとも限りません。納付期限までに買い手が見つからない場合は、納税が遅れてしまいます。では、納税が遅れた場合はどうなるのでしょうか。納税が遅れた場合は、延滞税というペナルティが発生する可能性があります。延滞税とは、納付期限までに納付しなかった場合に課される税金のことです。延滞税の税率は、財務大臣が告示する特例基準割合などによって計算しますが、最大で14.6%になります。せっかく節税対策をしても、納税が遅れて延滞税を支払うことになってしまっては節税効果が薄くなります。必ず、納税資金の確保の対策をする必要があります。

相続財産に、不動産がある場合は注意しよう

相続とは、財産を所有している人が死亡したことにより、その財産を相続人が引き継ぐことです。財産を無償で引き継ぐため、納税資金が足りなくなるような事態は起こらないように思えますが、そんなことはありません。なぜなら、相続財産には不動産や有価証券など、現金や預金以外のものがあるからです。特に、不動産の価値が現金や預金よりも大きい場合は注意が必要です。不動産の評価額は通常、数千万円単位、大きい場合は数億円単位になることもあります。相続税の税率は課税遺産総額の金額に応じて、10%~55%です。相続税の計算にはさまざまな控除があるため、一概には言えませんが、仮に不動産の価値が1,000万円、税率が10%だとすると1,000万円×10%=100万円の相続税となります。もし現金や預金で100万円の納税資金がない場合は、相続税を支払うことができなくなってしまいます。このように、相続財産に不動産がある場合は、納税資金が不足しないように特に注意を払う必要があります。

節税と資金調達を同時に考える

見てきたとおり、相続税の対策では、節税と納税資金の確保を同時に考える必要があります。納税資金の確保でいちばん重要なのが、資金調達です。納税までに自己資金を増やす方法として、次の2つが考えられます。

相続が発生した時に、まとまったお金が入るようにする

納税までに自己資金を増やす方法として一般的なのが、相続発生時にまとまったお金が入るようにすることです。相続した不動産や有価証券を売却しても、まとまったお金は入りますが、納付期限までに売却できるかどうかわかりません。そこでよく使うのが、死亡時に死亡保険金が入る生命保険です。生命保険金には、500万円×法定相続人の数分の非課税枠があります。例えば、法定相続人が配偶者と子供2人である場合は、500万円×3人=1,500万円までの非課税枠があるため、その範囲内の生命保険金には相続税がかかりません。しかも、まとまったお金が手元に入るので、納税資金に回すことができます。

生前から資金調達を進めておく

生前から資金調達を進める方法もあります。例えば、収益物件などを生前贈与することなどが考えられます。毎月の家賃収入が相続人に入るため、相続税の納付までの間に十分な納税資金を貯めることが可能となります。

納税資金をしっかり確保するため早めに税理士に相談しよう

相続対策では、節税対策とともに納税資金の確保も重要です。相続時に納税資金を確保するためにも、できるだけ早くから資金調達の計画を立てることが大切です。今回挙げた具体例以外にも、被相続人や相続人の状況に合わせた対策が可能ですが、独力で対策を考えるのには限界があります。相続税の納付が発生しそうな場合には、早めに税理士などの専門家に相談するようにしましょう。
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