相続した土地はどう分けた方が良い?土地の分筆とは

相続財産には、現金や預金、株式などさまざまなものがありますが、その中で遺産分割がもっともしにくいといえば、土地でしょう。土地は他の財産にくらべ評価額も高いので、少しでも評価額を下げたいところです。そんなとき利用するのが土地の分筆(土地を分割すること)です。ここでは、土地をどのように分筆すれば良いかを徹底解説します。

分筆の仕方によっては、評価額を下げることができる

土地を評価する代表的な方法には、一物四価ともいわれる実勢価額(時価)、公示価格、路線価、固定資産税評価額の4つがあります。実勢価格は不動産の取引価格、公示価格は国土交通省が公表する価額であり、相続税の計算で使う土地の評価は、国税庁が公表する路線価を使います。路線価を使って計算する評価額は、分筆の仕方を工夫することで下げることができます。土地の評価額を下げることは、そのまま相続税の節税につながりますので、ぜひ覚えておきましょう。

相続税における土地の評価とは

まず、相続税における土地の評価方法について確認していきましょう。相続税の土地の評価の基本の計算方法は、国税庁が公表する路線価に土地の面積を乗じて求めます。例えば、路線価170,000円の土地100㎡あれば、その土地の評価は17,000,000円です。

ただし、すべての土地が同じ立地にあるわけではないので、その土地がおかれた状況に応じて、評価を加算したり減額したりして、最終的な評価額を求めます。

土地を2つに分筆して評価額を下げるためには、分筆した土地について加算要素を減らすように分筆することが必要です。

土地の評価の分筆に関係する主な加算要素には次のようなものがあります。

二面道路の土地 2つの道路にはさまれた土地のことです。どちらの道路からも行きやすいなど、便利な立地のため土地の評価が高くなります。
角地 正面と側面の道路にはさまれた土地のことです。こちらも、どちらの道路からも行きやすいなど、便利な立地のため土地の評価が高くなります。

つまり、二面道路の土地や角地を2つに分筆することで、二面道路の土地や角地でない土地をつくりだし、加算要素を減らすことで、土地の評価を下げることができます。

分筆の方法とメリット

土地の登記簿を見ると、〇番の1、〇番の2というような表記がされていることがあります。これが分筆された土地のことです。分筆といっても、実際に土地の形状を分けるわけではなく、1つの登記であった土地を2つの登記に分けます。分筆登記を行うためには、所有者を決定していることが必要なため、あらかじめ遺産分割で、分割した土地をそれぞれ誰が引き継ぐかを決めておく必要があります。

土地を分筆するメリットですが、1つは見てきたとおり、土地の評価額を下げられることです。それ以外のメリットとして、相続が発生してから節税ができるということです。相続税の節税対策には、生命保険に加入したり、遊んでいる土地に賃貸物件を建てて土地の価値を下げたり、養子を取るなど、いろいろなものがあります。ただし、そのほとんどが、被相続人の生前に行う節税方法です。生前に行うため、実際に相続が起こった後に思ったより効果が得られないということもあります。土地の分筆は、被相続人が亡くなった後でも相続税の申告期限までに行えば、確実な節税効果を得ることが可能です。

土地を分筆するための注意点 不合理分割とは

土地を分筆すると、相続税の節税効果があります。しかし、同時に注意点もあります。それが不合理分割です。不合理分割とは、分割後の土地が宅地として通常の用途に供することができないなど、節税目的だけに行われたとみなされる分割のことです。不合理分割とみなされた場合は、分筆前の1つの区画として土地の評価を行う必要があります。そのため、せっかく分筆しても相続税の節税効果が得られません。分筆には登記費用などがかかるため、経費のみかかってしまう結果となります。

一般的には、次のような土地を生み出す分割は、不合理分割とみなされる可能性があります。

  • 無道路地(道路のない土地)
  • 利用するのに不都合な不整形地
  • 通常では考えられないような狭小な面積の土地
  • 現実の利用状況を無視して分割したと考えられる土地

土地を分筆する場合は、上記のような土地にならないように注意する必要があります。

相続トラブルにならないように、税理士などの専門家に相談することも大切

相続財産の中に土地が含まれていると、2つの問題があります。1つは相続税が高くなること、もう1つが相続人同士のトラブルになりかねないことです。土地を相続人同士で分割して相続したとしても、その土地の評価が平等になるとは限りません。不平等が生まれてしまい、遺産分割などで相続人同士のトラブルになってしまうこともあります。その場合は差額をお金で支払う代償分割などの方法もあります。土地の評価や相続人同士のトラブルの解決などは1人で行うのは難しいです。問題が起こることを事前に防ぐためにも、相続が開始されたら、できるだけ早く税理士などの専門家に相談するようにしましょう。