相続財産になるものとならないものを徹底解説!みなし相続財産にも注意を
財産を持っている人が亡くなると、相続が始まります。相続税の対象になる財産を相続財産といいますが、実は、財産には相続財産になるものとならないものがあります。また、亡くなった時点では手元になくても、相続財産とみなされるものもあります。ここでは、相続財産になるものとならないものについて、徹底解説します。
まずは、本来の相続財産となるものを把握しよう
被相続人(亡くなった人)が持っている財産は大きく次の4つに分かれます。
- 本来の相続財産(プラスの財産)
- マイナスの財産
- 課税対象にならない財産
- みなし相続財産
このうち、相続税の対象となる財産の中で最も一般的なものが、本来の相続財産です。本来の相続財産とは、被相続人が亡くなった日に実際に手元にあった財産のことです。
代表的なものとしては、現金や預金、不動産などがあります。具体的には次のようなものが本来の相続財産になります。
種類 | 内容(細目) |
---|---|
土地 | 宅地や農地、田・畑、山林、雑種地など |
家屋 | 自宅などの家屋、駐車場などの構築物、自分で建設した登記されていない倉庫(家屋)など |
有価証券 | 株式、出資証券、国債・地方債・社債など |
現金・預金 | 現金、普通預金、当座預金、定期預金など 。定期預金等の相続日までの利息も含みます |
家庭用財産 | 家庭で使っていた財産。家具や骨董品、貴金属など |
事業用財産 | 事業で使っていた財産。自動車や機械、商品、製品、売掛金、未収入金、貸付金など |
その他の財産 | 車両、貸付金、著作権、特許権など |
マイナスの財産も相続される
被相続人(亡くなった人)が持っている財産は、プラスの財産だけではありません。マイナスの財産も含まれます。借金や住宅ローンなどが相当します。マイナスの財産がある場合、プラスの財産からマイナスの財産を差し引いて、相続税が課されます。
例えば、住宅の評価額が1億円、住宅ローンの残高が6,000万円である場合は、差額の4,000万円が相続税の対象金額となります。マイナスの財産のことを忘れて相続税の計算をすると、必要以上の相続税を納付することになるため、注意しましょう。
具体的には、次のようなものがマイナスの相続財産になります。
種類 | 細目 |
---|---|
負債 | 借入金、住宅ローン、買掛金など |
公租公課 | 所得税、住民税、固定資産税などの税金等で未払のもの |
その他の負債 | 未払費用・未払利息、預り金など 支払や返金の生じるもの |
相続税の課税対象にならない財産がある
本来、被相続人が所有している財産には、すべて相続税の対象とすべきです。しかし、社会通念上または政府の政策上、相続税をかけるべきではないとされている財産もあります。
具体的には次のようなものが相続税の課税対象とならない財産になります。
- 墓地、墓石、仏壇、仏具、神具など
- 公益事業で使うことが明らかな財産
- 心身障害者共済制度に基づく給付金や受給権
- 相続税の申告期限までに、国、地方公共団体などに寄附した財産
みなし相続財産も相続税の課税対象になる
相続税の対象となる財産の中で、注意しなければならないのがみなし相続財産です。みなし相続財産とは、被相続人が亡くなった日に実際に手元にある財産ではないが、手元にあったとみなす財産のことです。「手元にあった」とみなすため、相続税の課税対象となります。実際に手元にあるわけではないので、相続税の計算時に加えることを忘れる可能性があり、注意が必要です。
具体的には次のようなものがみなし相続財産になります。
種類 | 細目 |
---|---|
生命保険金等 | 被相続人の死亡により支払われる死亡保険金や損害保険金
非課税限度額(500万円 × 法定相続人の数)を超えた部分に課税 |
死亡退職金等 | 被相続人が勤めていた会社から支払われる退職金や功労金など
非課税限度額(500万円 × 法定相続人の数)を超えた部分に課税 |
その他 | 特定の人に有利になる、遺言などによる一定の債務免除や低額譲受など |
ここまで被相続人の財産の種類を確認しましたが、相続税の対象となる財産をまとめると以下のとおりです。
- 本来の相続財産(プラスの財産)+みなし相続財産-マイナスの財産
※相続時精算課税制度を利用して贈与を受けた財産がある場合や、相続開始前3年以内に贈与を受けた財産がある場合には、それらも相続税の対象となります。
相続税がかかりそうな場合は、早めに税理士に相談しよう
見てきた通り、相続税の対象となる財産はたくさんあります。相続開始時に被相続人の手元にある財産だけでなく、借金などのマイナスの財産や、生命保険金などの相続開始後に手にする財産なども、相続税の対象となります。どのようなものが相続税の対象となる財産か、また、被相続人の財産をどう確定、評価するかなど、1人で判断をするのは困難です。また、相続税は賃貸マンションを建てたり、価値が上がりそうな財産を贈与したりと、生前から対策をたてることで、節税が可能な税金です。相続税がかかりそうな場合は、できるだけ早く、税理士に対策面も含めて相談することをおすすめします。